家から歩いて10分以内に10軒以上の風呂屋が
ひしめく風呂屋乱立地帯で育ったせいか、いまだ
町を歩いていても、風呂屋ののれんにフラフラ
誘いこまれる。「ゆ」の字が手招きする。
先日も実家に帰ったとき、近くの源ケ橋温泉に
入ってきた。ここは全国銭湯ランキング第一位に
輝く有形文化財指定の風呂屋だ。まさに郷土の誇り。
商店街の路地を入ったどんつきにある戦前からの建物
入口の屋根の上には、自由の女神像。しかも二人、
しかも二人とも、かなりの老体。古色をまとえるだけ
まとったその姿に、なんでここにおるん?とつっこみ
たくなる。どうやら入浴とニューヨークの洒落らしい
この場違いさは、それしかない。
女神像のその上には、これまた風雪に耐え抜いた
しゃちほこが二匹。老体に鞭うってしゃっちこばっている。
店開きの3時ちょうどに入ったら、レトロな脱衣場には
すでに湯から上がったおばあちゃんが三人。それぞれ
レトロなからだで涼んでいる。開店時間も、客にあわせて
もうええかげんらしい、このユルさ。
洗い場の戸を開けてキョロキョロしてたら、中にいた
おばちゃんが、洗面器はここにあるのを使ったらええよ、
すっとんできて教えてくれる。見ず知らずの私に、あれやこれや
と入浴指南してくれる。ほっとけへんのやな、こんな世話やきの
おばちゃん、昔ようけおったなあ。
大阪の湯が、毛穴の奥へじんわりしみこんでいく。
まだ陽の高い湯舟から天井を見上げていると、子どもの頃の
遊び場でもあった数々の風呂屋のことが思い出される。
映画館と風呂屋の数だけはふんだんにあるゼータクな環境だったよなあ
いまでは風呂屋は激減、映画館は壊滅状態。
自由の女神もさぞかしさびしいにちがいない。
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