2008年8月16日土曜日

ニューヨーク  ニューヨーク

家から歩いて10分以内に10軒以上の風呂屋が
ひしめく風呂屋乱立地帯で育ったせいか、いまだ
町を歩いていても、風呂屋ののれんにフラフラ
誘いこまれる。「ゆ」の字が手招きする。

先日も実家に帰ったとき、近くの源ケ橋温泉に
入ってきた。ここは全国銭湯ランキング第一位に
輝く有形文化財指定の風呂屋だ。まさに郷土の誇り。
商店街の路地を入ったどんつきにある戦前からの建物
入口の屋根の上には、自由の女神像。しかも二人、
しかも二人とも、かなりの老体。古色をまとえるだけ
まとったその姿に、なんでここにおるん?とつっこみ
たくなる。どうやら入浴とニューヨークの洒落らしい
この場違いさは、それしかない。
女神像のその上には、これまた風雪に耐え抜いた
しゃちほこが二匹。老体に鞭うってしゃっちこばっている。

店開きの3時ちょうどに入ったら、レトロな脱衣場には
すでに湯から上がったおばあちゃんが三人。それぞれ
レトロなからだで涼んでいる。開店時間も、客にあわせて
もうええかげんらしい、このユルさ。
洗い場の戸を開けてキョロキョロしてたら、中にいた
おばちゃんが、洗面器はここにあるのを使ったらええよ、
すっとんできて教えてくれる。見ず知らずの私に、あれやこれや
と入浴指南してくれる。ほっとけへんのやな、こんな世話やきの
おばちゃん、昔ようけおったなあ。
大阪の湯が、毛穴の奥へじんわりしみこんでいく。
まだ陽の高い湯舟から天井を見上げていると、子どもの頃の
遊び場でもあった数々の風呂屋のことが思い出される。
映画館と風呂屋の数だけはふんだんにあるゼータクな環境だったよなあ
いまでは風呂屋は激減、映画館は壊滅状態。
自由の女神もさぞかしさびしいにちがいない。

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