私の場合は「鬼のいぬ間の笛吹き」だ
鬼というのは、うちの(雑役)夫のこと
家仕事なので年中家にいる。おまけに出不精
そして、笛嫌い。とりわけ私が吹く笛の音が
特にきらい。理由は簡単、ヘタだからだ。
こそこそ遠慮しいしい鬼にきらわれながら
笛の練習をはじめて、かれこれ十数年
腕のなさか鬼の迫害のせいか、ちっとも
上達しない。
十年前と同じところを、今もきっちりまちがえる。
まちがえる箇所を指が正確に記憶しているらしく
みごとにまちがえる。ハンで押したように
ヘタにもならないがうまくもならない
たまーに、鬼も歯が痛くなるときや、ペンキを
塗りたくなるときや、竿をふりまわしたくなる
ときがある
歯医者やホームセンターや釣りへ、鬼が消えた
すきをねらって、ここぞとばかり笛を吹く
さすが音色がちがう
同じ笛とは思えないうっとりする調べ
つまづく箇所もすらすらクリアー
抑圧がないと、こうもちがうのか
バッハもモーツアルトもヘンデルも
メドレーで吹きまくる
もしや、うまなったんちゃう・・・
しかしだ、鬼が帰館するやいなや、あら不思議
指は固まり息が乱れる
元のヘタに正しくもどっている
かくして鬼は私のヘタな笛をますます嫌う
鬼退治なしに私の笛上達の前途は暗い